後見人って何?「相続」はどうなるの?そんな疑問にお答えします!

老後の人生をサポートしてくれる存在である「後見人」
今現在は自分ひとり、もしくはパートナーや家族の支えで自立して暮らしているとしても、このまま順調に年齢を重ねていけば、いつか誰かの手を借りなければ暮らしていけない立場になることは明らかですよね。
「後見人」と呼ばれる立場の人も、長い人生の終盤に差し掛かり、日常生活や財産の管理などに誰かの助けを必要としている人を支え、そのお世話をする存在です。
日本人の平均寿命は医療の進歩もあって徐々に伸び続け、現在は男女ともに80歳を超える長寿となっています。その一方で、ひとりで健康に日常生活を送れる期間を指す「健康寿命」の平均は男性・女性ともに70歳代にとどまっています。つまり、人生の一番最後の10年間は、誰かの手を借りなければ暮らしていけない状態で過ごすことになる人が多い、ということです。
後見人は、自分ひとりの力では財産の管理や日常生活を行えない人に代わって財産を適正に管理したり、生活する上で病気の治療や療養、介護といったことに関する法律行為を代理として行うのが仕事です。
後見人という言葉に馴染みがない方も多いかと思います。遺産相続などの問題も踏まえて、「後見人制度」に関してご説明していきます。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、例えば親やその他の家族などの財産を急に相続することになったり、その他様々の取引や法律的な手続きなどを、自力で行うのが難しいケースにおいて、後見人を選任し、不当な扱いを受けたり騙されたりしないようサポートするという制度です。
例えば、未成年のうちに両親を亡くしてしまい、まだ子供なのに急にたくさんの財産を任されることになった……というようなケースがありますよね。
その場合、裁判所で後見人を選任し、当人が大人になり正しい判断能力が身につくまで代理として後見人に財産の管理を任せることがあります。その対象が未成年でなく成年、つまり年齢的には大人である人に変われば、成年後見制度と呼ばれるようになるというわけです。
認知症や知的障がい、精神障がいなどが理由で判断能力に問題がある人を助ける後見制度
一般的な成人であれば、後見人がいなくても自分の力で物事を判断し、財産の管理や法律関係の手続きを行うことができます。ただ、中には事情があって正しい判断を行うのが難しい人もいます。
例えば知的・精神的に障がいがあったり、高齢になって認知症になった方などがそれに該当します。このような方々に関しては、未成年である子供と同様に周囲が配慮する必要があると判断されて用意されたのがこの後見制度なのです。
認知症や障がいの程度が軽ければ、本人が自身の置かれた状況を理解し、自分からすすんで後見制度を利用したいと申し立てることもできます。しかしほとんどの場合は家族や親戚など周囲の人が本人に代わって後見制度を利用したいと申し立てることになります。
成年後見制度の利用を申し立てる理由
成年後見制度を利用したい、と本人や周囲の人間が申し立てることになる理由として、多いのが預金や貯金の管理・解約を任せたいというものです。
銀行口座の暗証番号を忘れてしまい、ATMが利用できなくなったり、銀行窓口で手続きできずに戸惑っていたりということは、認知症の初期症状としてしばしばあることです。このように、本人に自覚があるケースの場合は自分自身で後見制度の利用を申し立てることも多いようです。
その次に多い理由として、「身上監護する存在が必要」ということが挙げられます。家族や親戚が遠くに住んでいたり、そもそも身寄りが既にない場合、本人の代理として様々の手続きや契約をする後見人が必要になります。
また、遺産の相続手続きを行う必要があるために後見制度を利用したいと申し立てるケースもよくあります。遺産分割協議などは相続人全員で合意できるよう進める必要がありますが、本人が相続人としての様々の判断ができない場合、後見人に代理として参加してもらうことで責任を果たすことになります。
遺産相続に関しては財産管理の観点からトラブルになることも
遺産の相続人となった場合、本人が遺産分割協議に参加できない状態であれば後見人が代理で出席することになります。
そのことで遺産相続に関して不利になってしまうのではないか、と不安になる方も多いようですが、その心配は全くありません。むしろ、後見人は本人の財産を適正に管理することが仕事ですので、基本的には法定相続分の遺産についてはしっかり主張することができます。
むしろ、後見人を立てての遺産相続に関する問題としては、本人の財産を無駄に減らしてはいけないという規則のためにトラブルが起きてしまうケースがあるということです。
本来なら相続人同士で話し合い妥協点を見つけていくべきところでも、後見人としては法定相続分に関しては相続することを主張し続けなければいけません。そのために協議がなかなか上手くいかなくなることがある、ということがしばしば起こってしまうのです。
逆に、借金などマイナスの財産がある場合、本人の財産を減らさないよう後見人が相続を放棄することもあります。本人であれば親族の手前借金を引き受けるだろう場面であっても、後見人は合計でマイナスになるようであれば相続放棄を選択します。
本人の遺産相続に関しては相続人に全て引き継ぐのが原則
後見制度を利用している本人が亡くなり、その遺産を相続人に引き継ぐことになった場合、後見人は全ての財産を相続人にそのまま引き継ぐことになります。
そもそも本人が亡くなってしまっているので、もはや後見人として代理を務める必要もないですし、代理としての発言権も失われます。